アルコール依存症について
アルコール依存症は専門医の治療が必要です。
アルコール依存症とは、ただの大酒飲みとは違って『病気』です。一度かかってしまうと、『止めたくても止められない』、以前のような『コントロールの利いた節度ある飲酒ができない』という、やっかいな病気です。日本では、200万人以上の方が、この病気にかかっていると推定されています。
朝から飲む、一日中飲む、連続して(連日)飲む、飲まないとイライラする、止めようと思っても止められない、仕事や家事に支障をきたす、隠れ酒をする、記憶が無くなるまで飲む、暴言を吐く、暴力を振るう、吐き気や頭痛を和らげるために飲む、などの症状に思い当りませんか?
飲みすぎにより体を壊し(食道炎、胃炎や膵炎、肝炎・肝硬変、脳神経障害など)、家庭や職 場や社会で様々な問題を引き起こし、ついには一日中飲み続ける連続飲酒の状態になり、体が弱ってアルコールを受けつけなくなってしまいます。アルコールが体に入らなくなると、離脱症状といわれる痙攣、不眠、異常発汗、ふるえ、いらいら、幻覚、興奮状態などが見られるようになり、飲み続ける時期と飲めない時期を繰り返しながら死に至る、危険な進行性の病気です。 (肝硬変の画像) 左:正常、右:肝硬変
アルコール依存症者にみとめやすい「お酒に対する認知(認識)の偏り」には、8つのタイプが
あります。当てはまるものはありませんか?
①自分には飲酒問題がない。自分はアルコール依存症ではない=問題否認タイプ
②自分なら、うまく飲める=節酒派タイプ
③感情や行動は、酒でコントロールできる(例:ストレス解消にはお酒が必要だ。仕事の付き合いにはお酒は欠かせない。眠れない時にはお酒が良い。など)=逃避型飲酒タイプ
④~だから飲んでしまった=言い訳・合理化タイプ
⑤酒が好きだから飲む。飲んだっていい=感情論タイプ
⑥どうせ断酒なんかできない=断酒あきらめタイプ
⑦酒をやめても、いいことない。どうでもいい=なげやりタイプ
⑧自分一人で酒はやめられる。いつでも酒はやめられる=断酒簡単タイプ
アルコール依存症は一筋縄ではいかないやっかいな病気で、依存症の方はアルコールを何としてでも手に入れたいという強い欲求や酔っぱらって正常な生活を送れないことからくる、嘘、隠れ酒、暴力、怠業、借金、飲酒運転などを繰り返す事になり、周囲にいる人達は役に立つ対応法を見つける前に、余裕を失い、疲れ、怒り、恥ずかしさ、孤独感、絶望感、自責感(自分の至らなさが酒に向かわせるのではないか)等に、苦しめられます。
また、お子さん達は、アルコールに振り回された親の元、手の回らない中で育てられる場合も多いと考えられています。うつや不登校などの問題にもアルコールが関係しているかもしれません。
これらのことから『アルコール依存症は家族を巻き込む病気』と言われています。
特に問題なのは、ご家族が良かれと思ってしていることや、やむを得ずやっていること(酒を隠す。飲酒の不始末(怠業や借金等)を本人の代わりに片づける。酒を飲まないという誓約書を書いてもらう。離婚すると脅す等)が、かえってアルコール依存症者の回復を遅れさせている場合があることです。
そのような場合、やり方を替える必要があるわけですが、どこに問題があるのか、どう替えたら良いのかを知ることは容易なことではありません。
「酒害者やその周囲の人たちが、そのしくみを知り、アルコール依存症への理解を深めることが、回復の第一歩です。」そのためにも、依存症の治療へつながることが必要です。心の問題を、一緒に考えていきましょう。
「この病気は、『節度ある飲酒』へ戻るというかたちの治療は、まず不可能です。」
「断酒することで『回復』し、健康な社会生活に復帰することができます。」
「唯一、この病気からの回復をもたらすのは、一滴も飲まないこと(断酒)です。」
当院では、治療の一環として専門スタッフによるARP(アルコール・リハビリテーション・プログラム)に基づいた勉強会やミーティング、自助グループ(断酒会やAA)参加、認知行動療法などを行なっています。家族間の問題がこじれて困っておられる場合には個別の相談にも応じています。
自助グループには依存症の方が参加されなくても、ご家族が参加されるだけで大きな変化がもたらされます。
依存症本人だけではなく、家族の方からの相談も受け付けています。秘密は守られます。
まずは、お電話ください。
菊池有働病院(代表電話:0968-25-3146) まずは、ケースワーカーが、ご相談に応じます。 |
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最後に、私達からのメッセージ
回復(断酒)が進むと、自助グループでは「私はアルコール依存症(または、アルコール依存症の妻(夫))になって良かった。お陰で断酒会(AA)と出会え、人間的に成長できた」という言葉がよく聞かれます。
「アルコール依存症からの回復には、本当に辛い作業が伴います。一人で立ち向かうのは至難と言っていいでしょう。ご家族の協力は患者さんにとって強力な支えとなりますが、それはご家族にとっても辛い作業となります。しかし、回復のためには、勇気を持って関係者に相談し、あるいは仲間を求め、一緒に携えてこの難問を乗り越えましょう。」